2016年03月25日

【160323】「この本の主人公、ゆうちゃんにそっくり。読んでみたら?」

「この本の主人公、ゆうちゃんにそっくり。読んでみたら?」
大学時代に交際していた彼女が差し出したのはサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』であった。
そのとき私は(俺にそっくりな男の話なんか読みたかないね)と手にも取らなかった。
あれから四半世紀が過ぎた。今さらながら『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(村上春樹訳)を読んでみた。
ーー何度も唾を飲み込みながら、ドキドキしながら読了した。
(これは、俺だわ…)
主人公ホールデンは名門高校に通う18歳。
何もかも気に入らない。あたりかまわず噛みついて総スカンを食っている。
彼なりの正義感も美意識もあったが、そんなことをわかろうとする人は周囲にいない(ふつういない)し、彼自身も開き直って悪ぶっていた。
退学させられたホールデンは、それから1年後、精神科医と向き合うことになる…
私がよくわからない衝動で語りかけている対象は「ホールデン」だったのだ。
そして同時に思い知る、当時の彼女の気持ちを。
最後の助け舟と差し出した本に見向きもしなかった「ホールデン」。その後、私に愛想を尽かし、彼女は成熟した男性の元に身を寄せたのも無理もない。
人を傷つけ人を損ね、その挙げ句、自分自身を傷つけ損ねる。そんなホールデンな俺ーーこんな馬鹿者をサリンジャーは描いていたのだ。
幸運にして私は生き延びた。ホールデンはその後どうなったのだろうか(サリンジャー自身?)。彼の消息が気になってしかたがない。
posted by 雄峰 at 12:03| 落人日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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