2015年12月02日

男酒日記 80日目「酒虫を追い出したら、健康も富も失ったという噺」


芥川龍之介の作品に「酒虫」という短編があると知り、この機会に読んでみた。
大酒飲みの体内には酒虫が巣食っていて、そいつが酒を飲んでいる。
ある大酒飲みが、道士の導きにより、体内の酒虫をおびき出し取り出すことに成功した。
ところがそれ以来、その大酒飲みは身体を壊しただけではなく、家産まで失ってしまった。
ーーこんな話である。
酒虫と幸不幸の因果関係について、芥川は三つの切り口で解釈しようとしている。
その1 酒虫は元来福の神であるにもかかわらず、それを取り除いてしまったという「酒虫福の神説」。
その2 酒虫は害でしかなく、それまでがたまたま強運であったという「酒虫厄病神説」。
その3 大酒飲みは酒虫そのものであり、それを追い出せば宿主も滅びるという「酒虫大酒飲み一体説」。
さて、私は大事な点に一つ触れずにいた。
酒虫が宿る大酒飲みはちっとも酔わないということだ。
となると、私には酒虫はいないようだ。私は大酔を発してしまうからである。
さて、正解はいずれの説であろうか?
私見を述べれば、この逸話ひとつで因果関係を語るのは土台無理というもの。解答欄には何も書けない。
ちなみに芥川龍之介も「それは自分にもわからない」として、この掌編を終えている。
酒飲みたちはむろん「1」であろう。かくして、酒飲みたちは、今夜も飲むための大義名分を得るのである。

写真:つげ義春「魚石」。磨けば魚影が浮かび上がるという。

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posted by 雄峰 at 11:38| 落人日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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