2015年12月02日

男酒日記 79日目「かいがいしい妻の影に」


アルコール依存症患者の妻は、とてもかいがいしいーー『人はなぜ酒を飲むのか』を読んで印象的だったのは、この箇所である。
私の知る依存症患者の奥さんもまさにそういうタイプである。
ろくに働かない夫の代わりに仕事に出て、一家を支えている。好きな酒くらい飲ませてあげようと家計を切り盛りする。
そんな姿は、私からすれば甘やかしすぎなのではないかと思うと同時に、そんな奥さんを持つ旦那さんを羨ましく思う。
だが、これが典型的な共依存というやつなのであろう。
面倒をみる、みられるという関係に過度に依存した関係は、一種の嗜癖的快楽を生むという。
いくら苦難があろうと、妻は尽くすことに生きがいを感じ、そこに自分の存在意義を見出しているのであろう。
ともにアルコール依存症という敵と戦うことで手を携えている。こんな連携であっても、夫婦の絆というものは確認しあえるのである。
その点、私はアルコール依存症失格者のようだ。
家内はかいがいしい人ではない。それどころか、びっくりするほど無関心である。
武家の内儀は、夫に過度な関心を持たぬよう戒めているとはいうが、そういうわけでもない。
もっとも私としては、へんに尽くされて、その分束縛されるより、無関心でいてくれたほうが助かる。
いくぶん寂しさはあるが、これも時間のなかで慣れるものだ。
こういう関係性を土台としていると、アルコール依存症になりようがない。なったところで、ひとり野たれ死ぬだけだからだ。
じっさいアルコール依存症どころか風邪すらひかない。頼るものがないと、気持ちに張りができて、元気溌剌になれるものだ。そう苦笑せざるを得ない。
私が断酒したのは、そんな先々の危機に対する野生的回避行動だったのかもしれない。

写真:『人はなぜ酒を飲むのか』。著者の生い立ちにおける苦悶や患者たちとの苦闘が生々しい。とてもいい本でした。ー 場所: 拓殖大学

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posted by 雄峰 at 11:37| 落人日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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