2015年09月17日

断酒日記 7日目 「簀巻きにされた祖父」

生きていれば、いま祖父は150歳くらいになろうか。明治初期、あるいは江戸時代の生まれらしいが、豊後岡藩士を出自とすること以外、詳しいことはわからない。
九州の片田舎の豪族として君臨し、「分家」を乗っ取って二家を営み、横溝正史の「八つ墓村」に出てくるような一族を差配していた。
我が親父は、祖父が七十過ぎのときの子である。皇紀二千六百年ということで、祖父は「二千六百」と命名した。驚くことに、さらにもう一人子をなし、そちらには「大東亜」と名付けた。
そんな歳であるから、生みの母が正妻であるはずがない。後妻というか、要は妾である。
本宅屋敷の対岸に妾宅を構え、夜な夜な大酔しては、ふんどし一丁で川を渡っていたという。
酒癖が悪く、あるときは村人に簀巻きにされて、水をじゃぶじゃぶかけられて懲らしめられたとも聞く。
一時は栄華をきわめた祖父であるが、戦後没落し憤死した。
死のみぎわ、ペンと紙を所望したので、辞世の句でも残すのかと思いきや、力ない筆致で「 サ ケ 」と書き、直後に絶命した。
そんな祖父に対し、親父は愛憎半ばする思いであるという。
妾の子という境遇やでたらめな命名、そして晩年の零落とすさみぶり。
そういう親父であるが、祖父の気質を濃厚に受け継いでいる。要は酒癖が悪い。それが少年期の私を苦しめた。
こんどは私がそれを受け継いで、息子たちを苦しめぬともかぎらない。
この悪しき気質は、どうやら酒とともに継承されているようである。
こたびの断酒は、たんにアルコール入り飲料の摂取をやめたということではない。
父祖以来の悪癖の連鎖に終止符を打つという、いわば血脈の浄化作業なのである。

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posted by 雄峰 at 10:27| 落人日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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